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2013年3月22日 (金)

情報の非対称性を意図的に引き起こし、ターゲットを術中にはめる「TPP交渉」と「振り込め詐欺」の構造的相似性

「TPP交渉」と「振り込め詐欺」の構造的相似性に触れようと思っていたところ、折りしも警視庁が、「振り込め詐欺」の新名称を公募しているとのこと。
詐欺犯罪者が被害者から金品を入手する手段が、「振り込み指示」に限定されなくなってきているからとのことのようだ。
確かにそのとおりで、「オレオレ詐欺」も「振り込め詐欺」も、名称としては覚えやすく、悪くないものだとは思うが、犯罪行為の現象的側面を抽出してみせたに過ぎず、犯罪の本質的メソッド/構造面に触れたものではない。
この詐欺手法の本質は、被害者(ターゲット)の心理的パニックを誘発させ、正常な判断力を失わせた上、それが働かない内に金品を騙し盗ってしまおうというものである。
したがって、そこに着目するならこの手の詐欺犯罪は、
〈パニック誘発詐欺〉
〈ショック便乗詐欺〉
あるいは
〈(架空)惨事便乗詐欺〉
(架空)を取ってしまって
〈惨事便乗詐欺〉
などと呼ばれて然るべきものと言える。
このような名称を警視庁が採用にいたるかどうかは知らない。きっと採用されない確率の方が高いだろう、あまりに生々しいゆえ。その生々しさは、もちろん被害者にとってではなく、“ビジネス”とやらをしている者たちにとって、である。
したがって、もっと分かりやすく言うのなら、これまで「オレオレ詐欺」だの「振り込め詐欺」だのと呼ばれ、様々な意味で一面の弱者であらざるを得ない人々をわざわざターゲットにする卑劣極まりない冷血系の組織型詐欺犯罪については、
「惨事便乗ビジネスモデル型詐欺」
などと、より正確な形で呼ばれる必要があるかも知れない。
(付言すれば、「ビジネスの常識」なるものを声高に叫びたがる「“ビジネス”モデル布教者」らは、このような行為を犯罪行為とすらみなしていない可能性も大いにあることに注意すべきだ)
そして、「TPP交渉」とやらが、これと同型(同構造)としか言えない経過を“なぜか”辿っていることに私たちは最大の関心をもって着目すべき時に来ている。

この手の犯罪を成功裡に導くためには、被害者(ターゲット)をいかに動揺させ、いかにスムーズにパニック心理に陥らせることが出来るか否かが肝となろう。
具体的には、ターゲットに対して
①あるのっぴきならない事象(惨事/不祥事)が身近に生じ
②あなたは既にその関係者/当事者の一人になっている

ということを、どこまでもリアリスティックに告げることによって、ショック/パニック心理を誘発させ、判断停止または判断力不全状態に陥らせることが出来るか否かがポイントとなる。
(心理学者ならより上手に説明できると思うのだが)ショック状態、パニック状態に陥った者の心理には、同調性バイアス、あるいは依存性バイアスがかかり、自分の判断よりも冷静な第三者(に見える者)の判断に意味もなく同調したり依存したりしがちになる。
津波襲来の際に、「クルマに乗って逃げるのは渋滞に巻き込まれるだけで危険ですよ、危険ですよ」と、いくら事前にアナウンスされていても、そして理性ではそれに十分納得していようとも、いざというときに誰かがクルマで逃げ始めると、我も我もと車に乗り込んでしまう“あの”心理状態である。
パニックに陥った心理は、他者に過剰に同調しやすくなり、かつ優れたモノ/冷静なモノ(津波避難なら、走るより圧倒的にスピードが出るはずの鋼鉄で出来たクルマ)に過剰に依存しやすくなる。
この人間の悲しい性(サガ)、これを私たちはまずは重々承知しておくべきだろう。
悪意ある者が、このような人間心理を意図的に操ろうと思えば、覚醒した明晰な意識状態からは、理解不能とすら思えるような暗示行動にターゲットをやすやすと駆り立てることも可能なのだ。
(いわゆる催眠術と呼ばれるものの成功率が高いのは、被験者側が暗示にかかることを予め受容しているからなのだろうが、いったんショック状態/パニック状態に陥らせることに成功すれば、そうした被験者と同じ受容心理が、同調バイアス等によって形成されてしまうため、通常では生じ得ないような暗示誘導の成功率もそれなりに高まることになろう)

さて、ここでTPP交渉のこれまでの経緯を思い起こしてみよう。
TPP参加問題は、日本人全体として積極的に参加しようという機運も何も一切ない時に、突如として、まさに降ってわいたように重要な政治案件として持ち出された。菅政権の時だ。
ターゲットの老人宅に一本の電話が掛かってきて“惨事”の発生を告げられたのと同じ状態である。
現実は、3.11が間に挟まっているので、若干間延びした経緯をたどっているが、この突如として浮上した「TPP参加」問題に絡んで声高に叫ばれ始めたのが「バスに乗り遅れるな論」にほかならない。
「バスに乗り遅れるな、バスに乗り遅れてしまえば、元も子もなくなる」
「バスに乗り遅れてしまえば、もう全ては取り返しがつかない、後の祭りだ」
これが、パニック心理の誘発台詞ではなくて何だと言うのだろうか。
「あなたのお孫さんが会社の金を使い込んでしまいました。このままでは警察に逮捕されてしまいますが、今すぐ返済すれば、事を荒立てずに済むんですよ」
さぁ、どうする、どうする。
「今、この機会を逃したら大変なことになる!」
私たちは、ある種のショックと半信半疑の中でパニックに陥り、冷静な判断力を次第に欠いて行くことだろう。
TPP交渉にあっては、手の込んだことに、安全保障問題も絡めて来ている。
「お孫さんと会社の関係だけならそれほど慌てる必要もないかも知れませんが、いわゆる暴力団関係者が不祥事の匂いを嗅ぎ付けてきていまして、早くしないと、お孫さんは一生ヤクザにたかられることになる可能性もあるんですよ」
ターゲットは、次第に「自分が積極的に行動を起こさなければ、大変なことになってしまうのではないか」という暗示行動の側に駆り立てられ追い詰められてゆくのだ。
ここで、なおもターゲットが躊躇している場合、ソリューション/解決法に見せ掛けた(つまり、親切ごかした)“提案”が、単なる連絡役に過ぎなかったはずの者から“なぜか”提供されることになるだろう。これもポイントの一つと言える。(同情した振り、事情を勘案した振り、情況を十分汲んだ振り、いやそればかりではない、しまいには、激励し、応援し、あなたと私は“お友だち”だとさえ言い始める…それが奴らの手口である)
“NOと言えない”人は、この段階にまで“事前交渉”が引き延ばされてしまえば、最終的な心理的防衛ラインも決壊されてしまうことだろう。
「分かりました。……では、どうすればいいのでしょうか?」……自分で、あるいは身内だけで解決すべき解決法をついには他人に委ねてしまう。
「簡単なことです。これこれこのようにしてください。絶対にうまく行きます。悪いようにはしませんよ。(わざわざ親切にこんなお知らせをしている私が、あなたに不利益をもたらすはずがないではないですか)」
漫才なら、ここで「おいおい、待て待て、もうオレの不利益は確定してるじゃねぇか、どうなってんだ、このヤロウ!」と突っ込みを入れるべき場面だ。
しかし、予め周到にパニック心理の中に落とし込まれたターゲットに、そんな余裕が生じようはずもない。
冷静な第三者から見れば、あるいは暗示から覚めた後で冷静になって考えてみれば、何でこんなバカバカしいことに引っ掛かってしまったのかと呆気に取られるようなことに、本気でつんのめって行ってしまう…。
不安心理を突かれ、巧妙に誘導されれば、人間は、個であっても集団/共同体であっても、時として途方もない愚行に走らされ、これでもかというほどの不利益を被ることがあり得るということだ。(射幸心理の場合もまた同様だろうが)
同調性バイアスの罠に掛かれば、どれほどチョー優秀な高級官僚ご一行様とて同じことだろう。
「効率性の追求」ではなく
、「多様性の保持」に意を尽くすべき時に、必ずしも敵対的ではない反論者、反対者を嬉々として追い落とすような真似をしているから、やがて肝心な時に、自ら掘った墓穴に自らが落ちるような醜態をさらすはめに陥るのだ。
始末に負えないとは、まさにこのことであるとしか言えない。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
あいかわらず超ロックな文章で突っ走っていらっしゃいますね!!
2013/01/23(水)に信濃毎日新聞 信毎web http://www.shinmai.co.jp/news/
『「もうかります詐欺」被害防止へ県警が命名』というのを読みましたが,警視庁と各県の警察も,縦割りなのかと,ふと思いました。
またしても,程度の低い感想となりました。ごめんなさい。

投稿: 植杉レイナ | 2013年3月23日 (土) 10時58分

植杉さま、コメントありがとうございます。
「もうかります詐欺」って、ヘンな名前ですね。
投資詐欺か何かのことでしょうかね。
ブログ的には、「経済ジェノサイド」の続編をやりたいのですが、いろいろあって行ったり来たりです。
問題意識としては、ほとんど同じではありますが。

投稿: にいのり | 2013年3月23日 (土) 19時19分

 説明不足をお詫びします。
昨年の金融商品関連詐欺が43件2億8962万円となった長野県警独自の取り組みとして,金融商品関連詐欺とギャンブル必勝法名目の詐欺を「もうかります詐欺」と名付けて,被害防止活動に取り組むことだそうです。
 「分かりやすい呼び方で認知度を上げ、被害予防に力を入れていく」とありましたが,わたくしにはかえって分かりにくい感じだったので,おぼえていただけです。
 なお,『リベラル21』 という“チーム”のブログがあります。この中でも,元金融機関勤務の半澤健市(はんざわけんいち)氏が執筆中の書評で中山智香子著『経済ジェノサイド―フリードマンと世界経済の半世紀』が扱われていました。このブログ,内容はたぶん良いのでしょうが,構成やら続き方が分かりにくく,ちょっと困って読みました。『ちきゅう座』http://chikyuza.net/ というサイトに一部転載があります。
それやこれやでDaily Cafeteriaの「経済ジェノサイド」論に,わたくしとしてはむしろ大きな期待を寄せております。

投稿: 植杉レイナ | 2013年3月24日 (日) 13時36分

植杉さま、情報ありがとうございます。
ご教示のブログ、たまたま読んでおりまして、私のような者が言うのもおかしいのですが、良い内容だったと思います。
私のは、小林秀雄じゃないですが、というか小林秀雄にかこつけて、それに輪をかける「批評をダシにして自分の考えを語っている」だけですから…。
ただ、わたし、書評の場合は、原テクストをたとえ少量でも極力引用したいというのはあるんです。
テクスト、テクスチャーを展開していくのが大事であって、決して抽象的な第三者にはならないというスタンス。
典型的なのは、ロックミュージック、ハウスミュージックの方法論(Pop)であり、素晴らしいベースラインがあったら、ちょいとそれを拝借させていただいて、自分も何かを奏でてみる、ということ。
「贈与」概念にも絡んでくる「共有」「共用」って、そういうことだと思っていますし、植杉さんが力を入れてらっしゃる文字起こしも素晴らしい「共有」への「贈与」行為だなと思っています。
誰かが、基礎的な織物を提供する、「素晴らしい織物だねぇ」とみんなが感心する、ある人は、それで荘厳な着物を縫い上げる、ある人はそんな布の切れ端を集めてきてパッチワークを作る、こっちも凄いけど、こっちもいいよね。
そういうことの楽しさって、「オレの言うことを聞け」だの「オレが正しい」「オレは優れている」という「オレオレ連中」のいる世界とは異なる/オルタナティブな、まさに中山氏の言うアントロポスの営み/暮らし/生活だと思うのです。
そういうテイストを〈共有〉できる人なのかどうか、これ、結構、重要なポイントだと思います。

投稿: にいのり | 2013年3月24日 (日) 16時36分

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