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2013年8月29日 (木)

訃報ふたつまで(藤圭子さん、谷川健一さん) その1

1970年に、まだ小学校低学年生だった私の中では、正直言って、藤圭子、カルメン・マキ、浅川マキのイメージは混在し混濁していた。
はっきりしているのは、アンダーグラウンドの雰囲気を身にまとった、しかし、明らかに70年代(初期)を象徴するディーバたちだと言うこと。
だが、一口にアンダーグラウンドと言っても、藤圭子と他の二者では、背景が異なる。
特徴的なのは、後者二者が寺山修司という稀代の文芸家に見出だされ、最初から文化の香りを身にまとって1969年にデビューしているのに比し、藤圭子は、最初から歌謡界/芸能界にどっぷりと浸される形で1970年にデヴューしている点だ。
乏しい知識ゆえの想像力を勝手に膨らませるなら、プロデュースの天才でもあった寺山修司“側”の勃興するアングラカルチャー系ディーバの対抗馬として後発的に見出だされた芸能界“側”の歌姫こそ、藤圭子だったのだという見方が可能ではないだろうか。
自らの幼いころの記憶をたどれば、『時には母のない子のように』と『圭子の夢は夜ひらく』については、お茶の間のテレビ受像機にも頻繁に流されていたはずで、あるしゅの衝撃的印象として心に刻まれている。
子供心にも、華やかなブラウン管の中に、不幸そうな顔をしたきれいなお姉さんが、暗い印象の歌を歌っている……それは、間違いなく衝撃的だった。
浅川マキは若干毛色が違うとして、カルメン・マキと藤圭子にあって、両者が互いをどう意識していたか知る由もないのだが、間違いなく圧倒的ポピュラリティを獲得したのは、藤圭子だったのであり、いわゆる芸能界側、演歌側にいた人々は、その活躍に安堵の胸をなで下ろしたのではなかろうか。
(ちなみに、1970年の売上高No.1の歌手は、藤圭子その人だったとのこと)
その生得的かつ家業的とも言える技巧的にも既に完成された圧倒的な歌唱力に加え、あの美貌、そして、気取ったカルチャー側ではなく、人々が馴れ親しんで来た演歌をてらいもなく歌ってくれるとなれば、いわゆる庶民大衆に圧倒的に支持されるのもムベなるかなではある。
だが、そこに「日本の残念な大衆音楽発展(/抑圧)史」という視点を導入するなら、たちどころに見えてくるものがあるはずなのだ。
なるほど、藤圭子が、いわゆる庶民大衆の間で圧倒的人気を誇るのは、あらゆる角度から見て当然過ぎるほど当然のことだった。
自分たちと同じ、あるいはそれ以上の貧しさを知る出であり、しかし、父母ともに音楽芸能者であった者として、独自の英才教育を幼いころから施されている圧倒的な実力の持ち主…。フェイクの要素が一切ない、まさにホンモノ、加えて繰り返しになるが、あの美貌…。老若男女ともに、夢中になるな、というのがウソのような話である。
だが、私たちが持つに至っている芸能界、歌謡界というものが、あれだけの逸材を得て、何をなし得たのだったか。彼女の自死を経て、私たちは改めてそうした問いを発しなければならないはずだ。
そして、先に結論的に言ってしまうなら、その才能をスポイルすることしか出来なかった……それが、私たちが持ち、現在に至っている芸能界のなした“仕事”なのであり、もし、「藤圭子の自死の真相」というものを本質的に見ようとするなら、そういうことに言及しなければいけないはずなのである。(しかしながら、商業ベースで、このようなことに言及できる者はいないだろう。であるなら、知識不足に悩まされながらも、私のような素人が無謀さを自覚しながらも、そういうことに言及しておかなければなるまい)
まず、あまり詳しく立ち入る余裕もなければ、私自身にその力量も不足しているのだが、近代以降の日本のポピュラーミュージックの発展/抑圧史を振り替えってみるなら、なぜ、「藤圭子」という巨大な存在が、苦悩の淵に沈んで行ったのか、その絡まった糸が少しは解きほぐされて行くだろう。
(この項つづく)

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