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2013年9月10日 (火)

訃報ふたつまで(藤圭子さん、谷川健一さん)その5

『日本経済新聞』とやらで始まった連載企画『欧化という熱病』第二回を読んだ。
当ブログでカーゴカルトメンタリティと名付けたのと同等のメンタリティによる「維新政府」下の異様な議論……社会的ダーウィニズムの周辺を、焦躁と劣等感の塊となって方向感覚を喪った蜂のようにただブンブンと飛び回るような議論……が紹介されていた。
読んでみて、福沢諭吉“思想”の限界と欺瞞ぐらいは自分でもある程度把握していたつもりではあったが、まさか『日本人種改良論』なる今の言葉で言えばトンデモ本が、福沢の序文を付されて堂々と出版されているとまでは知らなかった。
現在の一般的な表現では、異文明・異文化、またその異質な生活様式に接触した際に受ける心理的衝撃を「カルチャーショック」などと呼ぶが、それが適切な自己批評、健康な自己鍛錬に向かわず、闇雲な自己否定・他者崇拝に向かう時、残念ながらそのような人は神経症的症状を呈することが多いと言わざるを得ず、エスタブリッシュメント側がこのような病んでしまった自己に自覚的にならないまま制度設計を試みようとする時、制度の中に「自己否定の衝動・他者崇拝の信仰心/依存心」とでも形容すべきものがビルトインされることは避けがたいのではないか。
そして、そのような制度設計、あるいは社会ベクトルの中で、否定される側に回された人々、あるいは自前性、自尊にこだわりたい人々の中に、やがて鬱屈した憤懣・憤怒さらには怨念や反逆心のようなものが蓄積されていくのも無理からざる面があるとみなさざるを得ない。
明治期に進行した農村再編による大地主の出現と、食いはぐれた農民の都市流入による低賃金労働者(プロレタリアート)化、資本蓄積による財閥化の進展と拡張といった現象は、当然一面においては資本主義経済の発展なのであろうが、片面では今日で言う格差社会の進展なのであり、既得権の固定化による社会的流動性の衰退であったことは間違いない。
このような状況下で、当時の先進的思想であったマルクス主義をはじめとする社会主義者、共産主義者が声を上げ始めるのも私には当然だろうと思えるが、これまた当然ながら明治政府は彼らを危険思想の持ち主として弾圧していく。
弾圧とは、しかし、時の政府/エスタブリッシュメントのパワーの有り様を示す一方、何らかのソリューションがあって然るべき問題の抑圧と隠蔽でしかないという側面もあるのであって、ある政治勢力を弾圧によって壊滅に追い込んだとしても、そのような政治勢力を生み出すに至った社会的矛盾や軋轢がそれで解消されるわけでは当然ながらない。
クレバーでスマートな政府なら、弾圧の一方で何らかのソリューションを打ち出してバランスを取るべきところなのだろうが、圧政によって事態を表面的に糊塗しておくしか能のないような政府が、なにくわぬ顔でそのまま権力を維持していこうとするなら、政府側から見た“不満分子”らが、(メンバーの構成は変わろうとも)弾圧される一方の極から、弾圧されにくい一方の極にシフトしていくのも、社会力学的にみれば当然のことだと言うべきだろう。
今日にあっても、「テロとの戦い」という思想ともつかぬ弾圧方針によって事態を打開しようとするアメリカンヘゲモニーは、「テロが生じる理由」については一向に直視しようとしないため、テロの主体どころか仲間内にあってもうんざり感をともなった嫌悪の視線が注がれ始めている。
米国中枢は、「自分たちにとって不都合な方向に動こうとする世界」を弾圧的な施策によって抑え込もうと躍起になっているだけではないのかと見られ始めているのだ。
その躍起になる余りの強圧的で独断的・独善的な姿勢は、だから「価値観を共有していたはずの」仲間内からでさえ離米感情を惹起し始めていると言えよう。
米国の「自分たちにとって不都合な方向に動こうとする世界に対する手前勝手な御都合主義」……このようなものを米国自らが何らかのソリューションによって代替し得る力量を示せなければ、米国政府中枢はこれまで以上の“外憂内患”に悩まされるのは自明と言えるだろう。
特に、「内患」が米国にとって致命的になっていくのではないかと思われてならない。
まぁそれはそれとして、明治初年からのワンジェネレーションに華々しい発展によって固まっていった明治型既得権は、社会内部に大いなる矛盾や葛藤、軋轢を生じさせながら、しかし、恐らく上手く行かなかった世代交代による劣化と相俟って、「テロが発生する理由」を直視しないまま/できないまま、大正という緩衝期を経て、あっという間に昭和へとなだれ込んでいくことになる。

(この項つづく)

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コメント

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投稿: jfwgzpcxih | 2013年9月17日 (火) 12時08分

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