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2014年5月 1日 (木)

アジアで生じた二つの「惨事」

環太平洋国家において、大きな航空船舶事故が立て続けに起きている。
マレーシアはTPP加盟国であり、加盟国の中でも、独特な立ち位置を発揮する有力国の一つだ。
韓国は、TPP参加国ではないが、言うまでもなく米国との関係の深い環太平洋国家の一つだ。
こういう国家で、矢継ぎ早に通常ではあまり考えられない巨大な惨事が航空船舶関連で生じたことは、偶然なのだとしても、不自然さも残る。
こういう不自然さの残る事象について、何の確定的根拠もなしに「誰かの仕業」としてしまうなら、いとも容易に/いとも虚しくいわゆる「陰謀論」というものに堕してしまうわけなのだが、「惨事」というものは、まったき偶然だろうが、あるいは“下手人”が誰であろうが、事後的に「政治利用」することは十分に可能だ。
「ショック・ドクトリン」遂行者にとって、願ってもない“偶然の”惨事が立て続けに生じたことは、たとえ事象自体はどこまでも偶然であっても、それが民衆に与える心理的ショックは、「政治利用」されるべき必然性に覆われている。

興味深いのは、マレーシアの航空事故が、迷宮入りに近くなった絶妙のタイミングで、韓国の船舶事故が起きており、一本芯の通ったところが皆無の我が国の報道にあっては、前者の報道は後者の報道にかき消されてしまっている。
思うに、マレーシアの航空機事故は、「政治利用」には失敗した惨事と言える。
あまりにも不明な点が多く、なおかつ不明機が発見に至らず、事故原因について、推測の域を越えた詮索が不可能になってしまったため、「政治利用」しようとすれば、かえって「利用しようとする者の思惑」が詮索されてしまうような状況になったと言って良いのではなかろうか。
これは、マレーシア当局が情報戦において有能だったからなのか、事故の顛末があまりにも「政治利用」に適しない形に収斂してしまったからなのか、おあつらえ向きの代替「惨事」が生起したことによる相対的沈静化とみるべきなのか。
一方、韓国の船舶事故は、これから「政治利用」に向かってますます盛り上がっていくこと必定だろう。
昨日だったか、韓国大統領が初めて被害者に政権の不手際を詫びたという報道がなされていたようだが、事件のあらましを見る限り、被害者遺族側も、一般的世論も、謝罪によって手仕舞とはなりそうもない。
韓国の国内事情に詳しいわけではないが、サムスンは減収減益トレンドにはまりこんだようであり、ただでさえ難しい舵取りが迫られつつあった現政権には、致命傷となり得る要素をはらんでいるのが今回の「惨事」なのだと言える。
初の女性大統領として、いわゆる「従軍慰安婦問題」に的を絞った外交キャンペーンを張った朴大統領の気持ちは分からないではないがが、(それに対する日本側の反応は別問題として)この種のキャンペーンは、別に韓国の国際的地位向上に資する類いのものではないばかりか、国際的な同情を誘う/同情を買おうとするものでしかなく、日本の相対的地位の低下を狙ったものだとしても、実益上においては大して効果の上がるものではなかろう。
それに、この種の心情優先政治というものは、あまり執拗すぎると、その執拗さの原因の方にやがて興味が移りかねないリスクをはらんでいると言えるだろう。
先日来、「ジャパンハンドラーズ」ひいては「東アジアハンドラーズ」の政策転換が一部で話題になっているが、それに呼応するかのように、安倍政権は、それまでの反発型の政策対応を封じて、河野談話の踏襲を決定し、韓国におけるオバマ大統領の「おぞましい人権侵害」発言に対しても、安倍は「胸が痛む」と応じてみせた。
こういう“政策転換”の中で、韓国の朴大統領の存在が、(ハンドラーたちにとっては)厄介なものになりつつあるとしても全く不思議ではない。
「だから、船舶事故は引き起こされた」と言ってしまえば、これは陰謀論になってしまうのだが、「だから、船舶事故は、この機に政治利用される」とまでは言えるだろう。

韓国は、近年になって、「反米大統領」で失敗し、いよいよ「反日大統領」の失敗も明白化してきている。
日本の外交政策も負けず劣らずひどいものだが、近年の韓国の直球勝負型外交もけっしてほめられたものではあるまい。
少数の財閥系企業優先で、確かにそこそこの経済振興は果たしたのかも知れないが、IMF受け入れ以来の米国型資本主義の受容は、おそらく国内の格差拡大や統治の亀裂を広げるばかりというのが現況なのではないだろうか。
ひるがえって、韓国という先例があるのにも関わらず、米国との関係において「TPPは日米主導によるアジア経済の新しいルール作り」などとのたまってみせる「買弁勢力」に主導権を握られている日本政治というものも実に悲惨なものであり、何ゆえにイニシアチブを握られたまま打開できない政治ばかりが継続されなければならないのか、日本支配層の知恵のなさにも日常的に愕然とし続けなければならない。

安倍の低能なブレーンがよく口にする「なぜ、我々が集団的自衛権を有してはならないのか」「なぜ、我々が厳正な管理下で武器輸出することが問題視されなければならないのか」といった類いの議論は、全てが典型的「後追い型の議論」であって、そういう段階の議論を「オレサマがタブーを破ってみせる」レベルでやっていたのでは、イニシアチブというところからは遠ざかるばかりだ。
だが、安倍程度では、そういうことが全く分からない。
「世界一」が大好きな「危険な人の好さ」によって、「後追い」を「世界一」に到達するための必須の道程のようにみなしてしまうのが関の山なのである。
紛れもない憶測には過ぎないが、ジャパンハンドラーズは「韓国は大人しくさせるから、日本も過剰反応するのはやめろ」と“アドバイス”しているのだろう。
事実、アーミテージは、「中国についても韓国についても、日本側から刺激するのはやめろ」と何回となく釘をさしている。

自民党だの安倍だのが大好きな日本人は、もうめんどくさいから、アーミテージ様にでも帰化してもらい、次の首相職を委ねてしまった方が分かりやすくていいんじゃないのか。
こんなバカバカしい国には、それがお似合いかも知れない。
(あ、でも、アーミテージ様ならこう言うだろうね。「私は、私が考える限りにおいての米国の国益最大化に資するよう動いているだけであり、本質的に日本がどのような国になるべきかなどということは、私が示し得る範疇のものではない」と)

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