« 「グローバリズム」が抱える衝動、あるいは無意識について | トップページ | 中国グランプリの羽生選手 »

2014年11月 8日 (土)

誰がための「日本銀行」なのか?

11/8のNHKなる(いかがわしい自称公共の)TV局が次のような形で情報を流布している。
(引用開始)
日銀が決めた追加の金融緩和をきっかけに東京株式市場で日経平均株価が大幅に値上がりした先週、海外の投資家が株式を買った額は売った額をおよそ5360億円上回って、ことし最大のいわゆる「買い越し」になったことが分かりました。
(引用中断)

ここまでは私のような株式などとは縁のない素人にも良く分かる。
誰がどう見たって上がるのは分かっているのだから、元手のある者は買い増しに走るに決まっている。今や、東京株式市場においては外国人株主の比率の方が高いらしいのだから、集計を取れば「買い越し」になっているのはある意味当然だろう。
ところが一方で、次のような情報も流している。
(引用開始)
一方で、国内の個人投資家は、株を売った額のほうが買った額を8200億円余り上回る「売り越し」で、海外投資家が先週の株価上昇の要因だったことを示しています。
(引用終わり)
この後、ニュースは、「市場関係者」とやらのどうでも良い“分析”を垂れ流すのだが、そんなものはいちいち相手にしないとして、さてこの情報をどう見れば良いのか。
まず、文字になってみると、おかしな情報の出し方である。
5360億円「買い越し」したのは「海外の投資家」。8200億円「売り越し」したのは「国内の個人投資家」。
海外は、「個人・機関」合わせてなのか?曖昧過ぎて判断がつかない。国内の「個人」投資家が8200億円も売り越したなら、国内の「機関」投資家は、いったい幾らほど買い越しているというのか。(なぜ、そこは情報として開示しないのか)
こんなことを調べるのに、いちいち他メディアにあたってみるのもバカバカしいのでやらないが、まず、こういう曖昧かつ恣意的な情報の出し方の異常さ、異様さというものを指摘しておきたい。
次に素人判断として判然としないのが、「国内の個人投資家」の「売り越し」という現象だ。
週末になって株価の方は伸び悩んだようだから、国内の投資家は、高値と思われた時点で一気に売りに転じたのか。
だとするなら、いかにも堪え性のない判断ではなかろうか。政府・日銀が、金融の緩和どころか年金資金も直接株式市場に注ぎ込んでバックアップしますよと言っているのに、国内の個人投資家の余裕の無さは、奇妙にも見える。
もっともらしい「市場関係者」とやらの解説も加えるのなら、素人が当然疑問に思うであろうこのような点について、それなりの見方を述べるべきなのだろうが、その手の責任感など今や日本のメディアには皆無のようだ。
出したい情報のみを曖昧だろうが細切れだろうが小出しだろうがとりあえず出しておく、「解説」に見せ掛けた誘導を「専門家」や「関係者」の弁と称して一方的に垂れ流しておく…各方面から、せめてバランスに配慮せよと散々指摘され続けているはずなのに、改善しようとする気配すら見られない。
記憶が曖昧だが、フィナンシャルタイムズだかロイターだかは、日本の大企業の内部留保にも触れて、日本の金融政策全般に対する見方を示していたが、国内メディアにとって、それはどうやらタブーのようだ。
日本のメディアもメディアだが、いったい「日銀」という組織は誰のために何をしているのか。
日銀副総裁を務めたこともあるという岩田一政という人物は、「日経」のインタビューに答えて次のように述べている。
(引用開始…11/8日本経済新聞)
最も良いタイミングだった。……
米量的緩和の終了後も日銀から資金供給が続くとのメッセージも、世界の金融市場に送った。……
緩和の出口に差し掛かった際、日銀が財務体質の悪化を危ぶみ、引き締めが遅れる恐れもある。あらかじめ政府と損益の配分を決めておく必要がある。
(引用終了)
ある意味で、驚くべきと言いたくなるような素直な受け答えではないだろうか。
アメリカの量的緩和終了後に、国際金融資本がとまどわぬよう、引き続き日銀から資金供給をしますと…。
いざというときには、日本国民に応分の負担を担わせる(つけまわしができる)よう日本政府と(国民の与り知らないところで)話しておけよと…。
平気でそうしゃべっているように受け取れる。
素人判断ながらも、NHKと日経の情報をあわせると、いかに国内の個人投資家が日本政府及び日銀を信用していないかが見えて来そうだし、それ以上にいかに政府・日銀というものが一般国民など眼中にない場所で動いているかが見えて来そうだ。

日銀や年金の資金は、国内株式市場の「買い支え」に使われる…。
市中銀行を介した日銀の資金は、実体経済の中には流れて来ない…。
それで、どうやってデフレを克服しようというのか。
日銀の親玉が、物価を上げるぞ上げるぞと、どこかのカルト宗教の教祖紛いの縁起でもない念仏を唱えていて、それでどうやって国民のデフレマインドを解消しようというのか。
理解不能だ。
「物価が上がる」と言われれば、何%かに関係なく思わず身構えるのが庶民心理というものだし、それはどこから見ても正当な防御姿勢である。
どこの新聞だったか、これから、日銀から支給された資金と日銀によって演出されたドル高を背景にして、外資が買収(敵対的TOB)という形で攻勢を強めてくるかも知れないとの観測を書いているところがあった。
さもありなんという気がする。
いったい日銀という組織はどこを向いているのか。
「日本銀行」という名前の銀行は、「誰がための銀行だ」と言えば良いのか?
「金融緩和」という名前の「資金供給」は誰に向かってなされているのか?
そもそも黒田なるあの日銀の総裁の神経は尋常に機能しているのか?
素人が簡単に検討を加えただけでも、この分かりやすさ、このいかがわしさなのだから、専門家と称する連中は大方お見通しのはずだろう。
にもかかわらず、すっとぼけた/調子外れの/的を外した解説を平然としてみせては、一般的国民を煙に巻いているのである。
国内の「個人」投資家とやらが、信託の形が多いのか自前でやっているのか知らないが、大怪我を負わない内にあっという間に売り越しに転じているのは(それも姑息と言えば姑息だが)、当局の信用ならなさを加味すれば当然の反応なのだろう。
このようなまるで信用に値しない「システム」に取り囲まれて私たちはどうすれば良いのだろうか。
やはり、非貨幣部門の取引を活発化するのが、最も手っ取り早そうだ。
取引に「貨幣」を介在させるいがい能のない連中は、静かに静かに見放されて行くのだ、かわいそうに。

|

« 「グローバリズム」が抱える衝動、あるいは無意識について | トップページ | 中国グランプリの羽生選手 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1182932/57923818

この記事へのトラックバック一覧です: 誰がための「日本銀行」なのか?:

« 「グローバリズム」が抱える衝動、あるいは無意識について | トップページ | 中国グランプリの羽生選手 »